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後楽園ホールの格闘史

コラム:「世界一の聖地、後楽園ホール」

文・宮崎正博

ことさら大げさに煽り立てるつもりもなければ、地元意識まる出しの贔屓の引き倒しでもまたない。

この後楽園ホールこそ、ボクシングというスポーツにおける世界一の聖地なのである。

すべては数字が雄弁に物語る。2002年、青いビル5階に位置するこのホールで開催されたボクシング興行は、なんと134にも上る。つまり1年365日、夕方に水道橋駅を降りれば、3日に1回以上の確率で、激しいリングの戦いを見ることができるということだ。

その内訳を明かせば、もっとすごい。世界タイトルマッチから4回戦まで、日本全国で行われたプロボクシングの総試合数は2400弱。そのうち後楽園ホールでのものは、1213と半数以上である。その中には22の日本タイトルマッチと、12の東洋太平洋タイトルマッチも含まれる。

実際にこれだけの数、プロボクシングが行われる場所は、世界中くまなく探してもどこにもない。米国のギャンブルシティ、ラスベガスには、自ら『ホーム・オブ・チャンピオンズ』と呼ぶシーザースパレスやMGM、マンダレイベイなどの豪華カジノ・ホテルが、先を競ってビッグマッチを誘致しているが、中小のカードを提供することはほとんどない。近代ボクシング発祥の地ロンドンやパリにもない。タイのバンコクでも連日のように試合の報告はあるが、ムエタイと呼ばれるタイ伝統のキックボクシングに、国際式ボクシングが一つか二つ組み込まれるだけだ。

古きよき時代に遡っても事情は変わらない。かつてのメッカ、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンやロサンゼルスのオリンピック・オーディトリアムなどで、定期的なボクシング興行は長い間実施されていたが、あくまで決まった曜日に週一度開催されるウィークリー・ファイトだった。

後楽園ホールは違う。駆け出しの4回戦ばかりの興行から、選ばれたものだけが争えるタイトルマッチまで、ありとあらゆるボクシングがある。このところご無沙汰だが、世界タイトルマッチの会場に選ばれたことも29度を数えるし、数字の中には含まなかったが、アマチュアボクシングの関東大学リーグ戦まで行われるのだ。

ここには、強打の熱狂も至高の技術への陶酔もある。そして、何気なく行き過ぎる無名の純情に、静かに揺られることもできる。

聖地・後楽園ホールが間近にあることに、われわれボクシング人は、とことん感謝しなければならない。

宮崎正博
1956年、山口県出身。ボクシングにのめりこみ、20歳で上京。フリーターとして職を転々とした後、1984年にベースボールマガジン社に入社。以後13年間、ボクシングマガジン編集に携わる。5年前にフリーに転じ、おもにスポーツの編集、ライターとして活動する。ボクシング、格闘技、プロ野球、高校野球のほか、ボウリング、バドミントン、アイスホッケーなども人物ルポを専門誌に連載した。

写真提供:東京ドーム/ボクシング・マガジン

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