宇宙ミュージアム『TeNQ(テンキュー)』

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TeNQ1周年記念講演
「NASA・JAXAが目指す小惑星探査」を開催

7/8に開業1周年を迎えたTeNQでは、7/11(土)、日米で現在進行中の2つの小惑星探査の科学責任者を招き、TeNQ1周年記念講演「NASA・JAXAが目指す小惑星探査」を開催しました。

この2つの小惑星探査プロジェクトはそれぞれ異なる天体を探査するものですが、科学的な目標は大変似ています。太陽系初期の記録を残すとされる炭素質の小惑星を調査することで、太陽系の進化や有機物の供給過程を読み解こうとしているのです。そこで探査の様々な過程で協調し、探査による経験を共有し、成果を増大させることを目的にプロジェクト関係者の会合が、TeNQのバックヤードで開かれました。関係者が集まるこの機会に、TeNQでは関連した講演会を一般の方向けに開くことになったのです。

<講演会概要>

日 時
平成27年7月11日(土) 12:00-13:30

場 所
TeNQ内 サイエンスエリア

プログラム
12:00-12:30 ダンテ・ローレッタ教授講演
12:30-13:00 渡邊誠一郎教授講演
13:00-13:30 総合討論

<講演者>

ダンテ・ローレッタ氏:
アリゾナ大学教授。宇宙物質科学に関する著名な研究者で、特に探査機を用いた宇宙物質の分析が専門。
米国が進める小惑星探査ミッションOSIRIS-REx(オサイリス・レックス)のリーダー。

渡邊誠一郎氏:
名古屋大学教授。日本の著名な固体惑星物理学者で太陽系形成論が専門。
元日本惑星科学会会長。
小惑星探査機「はやぶさ2」の科学リーダーとして、小惑星1999JU3の探査ミッションを推進中。

宮本英昭氏(進行):
東京大学准教授。小惑星探査機「はやぶさ」や月探査機「かぐや」の科学メンバーで、現在「はやぶさ2」や火星探査計画などに参画。TeNQのサイエンスエリアを監督。

会場は、宮本先生も日々太陽系探査の研究にあたっている研究現場であるサイエンスエリアに設けました。
8面のマルチビジョンも使用して、宮本先生が同時通訳しながら日本語と英語も飛び交い進行しました。
参加者はお子様から宇宙好きの方まで100名程と多くの方にお集まりいただき、1時間半の長時間でしたが、終始熱心に聞き入る様子で、皆さんの関心の高さが感じられました。

最初に、アリゾナ大学 ダンテ・ローレッタ教授から、来年打ち上げ予定のアメリカの小惑星探査機「OSIRIS-REx」について、次いで、名古屋大学 渡邊誠一郎教授から日本の「はやぶさ2」について、それぞれミッションの狙いや見所などを解り易く解説いただきました。

ダンテ・ローレッタ氏講演内容

OSIRIS-Rexの計画概要

OSIRIS-Rex(オサイリス・レックス/Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security, Regolith Explore)は米国版はやぶさ探査計画ともいえる小惑星探査ミッションです。
2011年にアリゾナ大等から提案した後、NASAの計画として選定されました。2013年に正式に政府に承認され、計画が進められています。2016年9月に探査機が打ち上げられ、2018年8月に目的地ベンヌに到着し、2019年10月にサンプルを採取、2023年9月にサンプルを採取したカプセルのみユタ州に帰還する予定です。
OSIRIS-Rexのミッションの主な目的には、太陽系の歴史を紐解くこと、将来の有人探査に役立てること、小惑星の資源利用の可能性を理解すること等があります。また、こういった探査について学生に教育して伝えていくことが大変重要だと考えています。
目的地ベンヌは、太陽系の初期の歴史を記録している炭素質の小惑星です。これを調査することで、有機物、生命の根源を解明することに繋がります。

OSIRIS-Rexの搭載機器

OSIRIS-Rexにはその調査目的を果たす為、様々な機能を搭載しています。アリゾナ大が手掛けた3つの特徴的なカメラ(SamCamサンプルを採集する為のカメラ、MapCamカラー撮像を行うカメラ、PolyCam望遠鏡のように高解像度の画像を取得する為のカメラ)。また、OVIRS(可視赤外分光計)によって有機物を調査し、OTES(熱放射分光計)によって表面状態を知り内部情報を調査します。そして、TAGSAMアームでサンプルを採取し、回収カプセル内に収納します。

JAXAとの協調

このOSIRIS-Rexのミッションにとって、JAXAが行ったはやぶさの成果は非常に重要でした。はやぶさが調査したイトカワは岩石で覆われてゴツゴツしているのですが、そんな表面の小惑星からサンプルを取って戻ってきたというのは、非常に驚きでした。
今回私たちが日本に来たのは、未知の発見を目指すプロジェクトにお互いメリットをもたらすようJAXAの科学チームと協調する為です。
JAXAのはやぶさ2とは、炭素質を調査し有機物の成り立ちを解明するという、目標とする科学テーマが似ています。
JAXAとは、次のようなことで、探査から得る経験を共有しようということで合意しています。
・小惑星との接近段階・全球撮像
・着地点の選定
・サンプルの保管・記録
・共同解析

お客様からの質問

Q)持ち帰るサンプルのサイズはどれ位ですか?

A)ダンテ氏:科学者からは60gの要望がありますが、技術者は150g可能としてします。最大で2mm。

Q)目的地ベンヌは軌道が速いのですが、探査機はどのように着地するのでしょうか?

A)ダンテ氏:これはとてもチャレンジな点です。周回速度を自転に合わせてホバリングして近づくようにして着地を狙います。

渡邊誠一郎氏講演内容

小惑星探査について

小惑星探査ははやぶさが行ったことで日本でも有名になりましたが、小惑星のサンプルリターンは日本がリードしている研究手法です。JAXAでははやぶさ2の後、火星の衛星を調査する計画がありますが、NASAでもOSIRIS-RExの後、火星本体を調査する計画や、ESAでも2014年にロゼッタが彗星に着陸した他、今後も計画が予定されています。
そもそも、なぜ小惑星の探査が重要なのでしょうか。小惑星は火星と木星の軌道間の小惑星帯(メインベルト)に約70万個も見つかっています。またNASAのニューホライズンズが観測している冥王星も含むカイパーベルトにも多く存在します。
地球は火山等の影響を受け形成期の記録は失われてしまっているのに対し、小惑星の表面には太陽系初期の大動乱の記録が残っています。この、言わば“小惑星の日記”を読み取ることで、太陽系の進化が読み解けます。そして、小惑星の破片が地球に落ちてきたものが隕石で、地球に水や有機物が供給された過程も読み取ることができます。隕石も100年程研究されていますが、隕石はどこから来たのかが明確でないという、小惑星との違いがあります。
小惑星は最大のケレスで直径950km、はやぶさが行ったイトカワはそれと比べてとても小さい(直径500m程)のが判ります。

はやぶさ2について

はやぶさとはやぶさ2の外見上の大きな違いは、アンテナです。アンテナが1つなのがはやぶさ、2つなのがはやぶさ2です。そして、改良されたサンプラホーンでサンプルを回収します。
それでは、はやぶさ2の科学的な目的について。小惑星には明るい(太陽に近い)「S型」(普通コンドライト)と暗い(太陽から遠い)「C型」(炭素質コンドライト)があります。はやぶさ2が目指す1999JU3は地球と火星の間に存在する炭素質コンドライトで有機物や水を含有しています。これを調査することで、地球に水や有機物が供給された過程、生命の根源を解明することが期待されています。
その場観測と、リターンサンプルを科学分析することで、 “小惑星の日記“を読み取り、太陽系の進化を読み解きます。クレーターをつくる衝突実験等も行い、衝突・破壊・合体等による物質の変化から惑星の成長過程を、有機物反応からは、イオウ分子の非対称性といった有機物の多様性についても研究します。
また、隕石として地球に落ちてくるものの情報を知ることで、セキュリティ対策にもなります。
OSIRIS-RExとの協力についてはダンテさんからもお話にあった通りですが、時期の近いそれぞれのプロジェクトによる調査結果で、違いや同じ点を互いに知ることで、その成果は何倍にもなります。

お客様からの質問

Q)1999JU3にイトカワのような名前はないのですか?

A) 渡邊氏:まだ名前はありませんが、公募の機会があれば是非皆さんも考えてみて下さい。生きている人の名前は付けられません。神話等から取ることが多いですね。
※講演会から間もなく、JAXAから名称公募の発表がありました!公募期間は8/31迄、TeNQサイエンスエリアでも応募用紙を置いています。

Q)小惑星の中からどうやって目的地を決めたのですか?

A) 渡邊氏:地球の有機物を含んでいる所=C型としました。イトカワは含んでいません。但し、C型は地球から遠い所が多いので、1999JU3は近い所にある貴重な天体なのです。因みに、OSIRIS-RExが行くベンヌは自転が速くタッチダウンが難しい天体ですので、技術的にチャレンジングな点です。

Q)サンプルを落とした後のはやぶさ2、渡邊先生ならどんなことをさせたいですか?

A) 渡邊氏:別の天体に行くことも可能です。はやぶさは残念ながらトラブルがあって実現できませんでした。はやぶさ2のサンプル回収後の計画は白紙ですが、もうサンプル回収することはできませんので、見たことも行ったこともない所の撮影を行って、新しい発見をしたいですね。

Q)はやぶさ2が行って帰ってくるのはどれ位ですか?

A)渡邊氏:2014年12月に打ち上げ、2020年12月に帰ってくる予定ですので6年間です。その間54万km移動します。地球の公転の方が速いので地球はその間56万km移動します。ですから、移動距離は大事なことではありませんが、6年間という期間は重要です。2020年といえば東京オリンピック開催と同じ年ですね。今話題の(計画見直しになった)オリンピックスタジアムの総工費は2,500億円と言われていましたが、はやぶさ2の予算の10倍にもなります!尚、OSIRIS-RExの予算は約1,000億円です。

総合討論

お二方から各ミッションの概要や見所を判り易く解説頂いた後、これを踏まえて、観覧者の方からの質疑応答による総合討論に移りました。皆さん興味津々で質問が途絶えることなく、時にユーモアを交えての回答で、こちらも大いに盛り上がりました。

お客様からの質問

Q)OSIRIS-RExはミッション後にどこに行くのですか?

A)ダンテ氏:延長ミッションでは、太陽系内の金星方面を目指します。太陽に近く熱くなってしまうのが難点です。

Q)採取したサンプルの物質が変わってしまうことはないのですか?

A)ダンテ氏:それは腐心する点です。温度を低く、変わらないように注意します。地球帰還用のカプセルに入れる瞬間が大事で、太陽が向いていると熱くなってしまうので太陽が向いていない時を狙います。
渡邊氏:はやぶさ2でもカプセルの蓋を密閉して、取り出す時もカプセル内のガスを抜いてから固体を出すという手順で、サンプルの情報が逃げないように心掛けます。

Q)岩をそのまま持って帰ることはできないのですか?

A)ダンテ氏:できればそうしたいところですが、最大でも2mmです。掃除機のように吸い込む方法なので限界があります。
渡邊氏:アメリカではゴールドラッシュに代表するように採掘の歴史がある国民性でしょうか。数10m規模の小惑星ごと地球に連れてくるなんて大胆な計画もありますよね。

Q)表層の採取だけではなく、古い記録の残っている地層を掘ってコアを持ってくることはしないのですか?

A)ダンテ氏:小惑星に降り立って掘る機構が必要になります。行ったことのない小惑星の表面は未知なので、ミッション達成の保証ができません。
渡邊氏:ロゼッタも彗星の着陸を試みましたが、姿勢維持が難しく、失敗して衝突してしまいました。

Q)もう一度同じ所に行ったら、天体の状況が判っているので、可能なのではないでしょうか?

A)ダンテ氏:確かにそうですね。でも、行ったことのない所に行くことに価値があり、何よりエキサイティングだと私は思います。
渡邊氏:目的を変えれば、同じ所に行くことにもおっしゃるように有意義な点があります。地上で戦略を練ることができますので。有人のトレーニング等に通じる考え方です。

Q)小惑星探査のコストダウンや、国から資金を得る工夫はどんなことをしていますか?

A)ダンテ氏:あるものを改良することです。そして、国民に重要さ・期待・興奮というものを伝え、多くの方に理解してもらうことです。
渡邊氏:コストというのはリスク対策に割かれます。はやぶさ2は今までの技術に新しい点を加えたベストミックスで、ほぼはやぶさの技術を活かしていますので、とても割安にできています。ここにいる皆さんは勿論大丈夫だと思いますが、多くの方に理解して頂き応援して頂くことが鍵となりますので、宜しくお願いします。

Q)好きな食べ物は何ですか?

A)ダンテ氏:(日本語で)スシガダイスキデス!
渡邊氏:ダンテさんのいるアリゾナもメキシカンが美味しい土地ですが、私はメキシカンが好きです。

Q)どうしたら先生達みたいになれますか?

A)ダンテ氏:興味をもって、それに従って質問して下さい。それに向かってベストを尽くし、ハードに勉強することも必要です。人から違うと言われても、自分の考えを突き詰めて下さい。
渡邊氏:自分がやりたいことをいかに実現するか、それには努力が必要ですが、それを苦しいと思わず面白いと思うことです。私の今やっている研究には、算数も、英語も、それ以上に国語も重要です。その勉強を嫌だと思わず、将来の為に、自分のやりたいことをやる為にやっていると、いろいろなことを楽しんで臨んで下さい。

宇宙研究の最先端、小惑星探査の現在がとてもよく判りました。
そして、参加者と近い距離で直接、トップサイエンティストであるお二方のお人柄も伝わるような、とてもいいお話をたくさん伺えました。本当にありがとうございました!!

左から宮本英昭氏/渡邊誠一郎氏/ダンテ・ローレッタ氏

この講演で小惑星探査により興味を持った方もいるかと思いますが、はやぶさ2とOSIRIS-REx帰還迄の今後の行程にも注目していきたいですね。OSIRiS-RExが帰ってくる8年後の2023年には、今回参加された方の中から、小惑星探査に関係する研究者や技術者になっている人がいるかもしれませんね。

営業時間

平日11:00~21:00
(最終入館 20:00)
土日祝・特定日 10:00~21:00
(最終入館 20:00)

休館日:12/5(火)
特定日は春夏冬休みなど
※年中無休

TeNQファミリーデー:
11/23(木・祝)、12/3(日)
(4歳未満の方も入館可)
※詳細はこちら

お問い合わせ:03-3814-0109(営業時間内)
場所:黄色いビル6F

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