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スティーブ・スクワイヤーズ博士講演会
「ローバー、火星を駆ける:赤い惑星の探査」開催

10/30(日)、火星探査車「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」の主任開発者であり、「火星に水があったことを証明した」コーネル大学のスティーブ・スクワイヤーズ博士にTeNQにお越しいただき、サイエンスエリアにて講演会と来館者とのトークセッションを実施しました!
昨年につづき2回目の講演会です。用意していた椅子が埋まってしまうほどたくさんの方が講演会に参加してくださいました。

<講演会概要>

タイトル
「ローバー、火星を駆ける:赤い惑星の探査」
Roving Mars: Exploration of the Red Planet

日時
2016年10月30日(日)14:00~15:00

スクワイヤーズ博士は火星科学の第一人者。「NASAが最も信頼する宇宙科学者です。世界の宇宙科学のリーダーともいえます。」と、東京大学准教授であり、TeNQリサーチセンター長でもある宮本先生からご紹介があり来館者の拍手の中、博士が登場しました。

 

講演内容

「火星はとても寒く乾燥している場所です。しかし、かつては今とは違っていたと考えられています。」という興味深い火星についてのお話から、火星探査車「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」の話題へ。

火星探査車「マーズ・エクスプロレーション・ローバー」とは

2003年にNASAが打ち上げた、火星の表面、地質調査を目的とする2機の無人探査車のことです。2機はそれぞれ「スピリット」「オポチュニティ」と名づけられ、打ち上げから約半年をかけ火星に到着しました。その後、2機は火星表面を探査し、地面に残された鉱物や地形的な痕跡などから、火星には過去に「液体の水」があった、という事実を発見したのです。

ローバーの打ち上げ前の映像や探査のシナリオがわかる動画、ローバー自身が撮ったセルフィー等、貴重な資料もスクリーンに映し出され、博士のお話をよりリアルに捉えることができました。成功談だけではなくいくつもの困難に直面したことや、具体的な探査目標についても詳しく説明がなされ、「どうやったら探査機を上手く動かせるか。実際にどう動いたのか。」熱心にメモをとる参加者の方もいらっしゃいました。

探査車「スピリット」が初めて到着したのは、なんと直径160キロもの大きなクレーター。「当時はきっと大きな湖だっただろう」というお話と共に、クレーターの中で発見された岩の写真が映し出されます。実際にローバーが火星に到着したことがよりリアルにわかる瞬間です。また、火星衛星による日食の写真や火星での日没の写真も印象的でした。「火星の大気には赤く細かいダストが浮遊しているので、昼間の空は少し赤い色をしています。逆にこれが光を散乱するので、日没のときの空は青っぽい色になるのです。地球とは逆ですね。」というお話には驚きの声もあがります。

次は探査車「オポチュニティ」の説明と写真へ。「砂利のように見える小さな石を顕微鏡で見ると、丸い物質が多く見つかりました。これは地質学者の中ではいわゆる“ブルーベリー”と呼ばれる4~5ミリ位のものです。この“ブルーベリー”が見つかったことは火星に水があるということの証明にもなるのです。」とのこと。“ブルーベリー”には酸化鉄が濃集しており、地球上では水中で長時間かけて形成されることから、過去の火星が水に富んでいた証拠になりうるそうです。
ちょうど今朝火星から届いたという貴重な映像も。この探査車「オポチュニティ」は元々90日間探査をする予定だったところなんと、12年半も火星を探査しているそうです。まさに大冒険!

そして、最後に。探査車に携わった科学者たちの写真が映し出されます。このミッションが成功したのは、4000人以上の人たちの協力があったからこそであり、まさに研究者たちの努力の結晶である、とあたたかく力強い言葉で締めくくられました。

次に来館者とのトークセッションへ。ここで一部の質問をご紹介します。

Q&A

Q)火星を見ると全体的に赤いですが、先ほど映像で見た火星は地表面だけ赤く、車輪で掘られた地下は黒いところもありました。また先ほど酸化鉄、ヘマタイトの話も出ていて疑問に思いました。火星が赤いのは水ではなく紫外線等の影響があるのでしょうか?

A)火星の表面が赤いのは酸化鉄を含んでいるためですが、大気中にも非常に細かい酸化鉄のダストがいたるところにあります。ダストの大きさは、タバコの煙の粒子くらい小さいです。そのため風が吹くとまき散らかされ、火星が赤く見える理由のひとつになっています。
ちなみにダストで覆われている表面部分を少し取り除くと、異なる色の土砂を見つけることができます。赤いダストは水の影響を多少なりとも受けていますが、火星で“水”の影響がみられるのは、ダストだけではありません。さまざまな鉱物としても見つかっています。ただしそれらが作られた場所は、かなり限られていたようです。先ほどは例として“ヘマタイト”を取り上げましたが、他の鉱物も作り出されており、これらは必ずしも赤くありません。

Q)プロジェクトには何人が参加していますか?

A)私が書いたローバーの本には、プロジェクトに関わっていた4000人ほどのお名前を掲載しています。しかし本当はもっと多くて、5000~6000人くらいの方々が関わっていたかもしれません。とても大きなチームです。

Q)将来的に火星の研究がしたいと思っています。これから火星研究をするにあたり必要な学問分野や大切なことはありますか?

A)もし火星の地質学に興味があるのなら、2つ大切なことがあります。1つ目は地球の地質学に詳しくなること。2つ目は何に対しても先入観を持たず、新しい考えも柔軟に捉えて理解する心です。

Q)私は火星に興味があり火星に行きたいのですが、宇宙飛行士としてどんな勉強をしたら良いでしょうか?

A)宇宙飛行士になるためには様々な分野の知識が必要です。私が知っている宇宙飛行士たちで共通していると思うことは、皆自分の専門学問分野に対して強い熱意を持っていることです。火星に行く宇宙飛行士になるためには地質学だけではなく、医学や法学など、様々な分野の専門家が必要になります。まずは今自分が一番好きな分野を熱心に学ぶことがカギになると思いますよ。

Q)ローバーのタイヤが好きです。こんなタイヤがいいと思うものはありますか?

A)このローバーに関して言うとタイヤはアルミニウムでできています。実は私も車輪がすきなんです。砂場や石、さまざまなものを乗り越えられるように作られています。色々考えればより良いものは生まれるのだと思いますが、この探査機の設計時点では、ここで使われているものが最も良いものと考えていました。

Q)どんな女性がタイプですか?

A)火星人…ではないですよ(笑)女性の友人も多いですが、素敵な奥さんと2人の娘がいます。

Q)プロジェクトを進めるにあたり政治面や金銭面など様々な壁があったと思いますが、その中でも最も困難だったことは何でしたか?

A)スケジュールです。NASAが探査計画を選定してからローバーをロケットに搭載するまでたった34ヶ月しかありませんでした。実際は48ヶ月は必要だったのです。このプロジェクトに関われたことは自分にとってとても素晴らしい経験でしたが、もう一度やりたいかと言われると…(笑)と、思うくらいプレッシャーも大きかったです。

Q)火星の表面で人はいつ生活できるでしょうか?

A)ほんの30年先くらいでしょうか。それより短くなることが私の希望です。特に解決できない本質的な問題は存在しません。資金や人々の同意があればいつでも可能だと思っています。何よりも“国際的な協調”が必要でしょう。

Q)次のローバーのミッションは何でしょうか?

A)次のNASAの大きな挑戦は、火星の表面の岩石を地球に持ち帰ることです。我々が地球上で持っている分析装置は、火星に送りこむことのできる分析装置よりもはるかに性能がいいからです。2020年にNASAは火星に探査ローバーを再度送り、科学的に重要なサンプルを探して地球に持ち帰るための“準備”をします。その次のミッションで、そのサンプルを実際に地球に持ち帰ることを計画しています。


トークセッションの後は、限られた時間ではありましたが個別の質問やサイン会が行われました。博士の著書『ローバー、火星を駆ける』も販売直後に売り切れとなりました!

熱心に英語で質問をする女の子も。お母様にうかがったところ、この講演会にどうしても連れて行ってほしいと熱望していたようです。将来がとても楽しみですね。

ローバーより実際に撮影された火星映像の前
(左:宮本英昭 准教授 右:スクワイヤーズ博士)

この日はお子様から大人まで、非常に多くの方にご参加いただきました。普段は会えない科学者の方々のお話が聞けるワクワク感、そして疑問を直接ぶつけられるということは非常に貴重な経験です。私も皆さまと同じ気持ちで講演を聞いておりました。

今後もTeNQでは皆さまに宇宙をより身近に感じていただけるようなイベントを開催していきたいと思います。
今回参加してくださった皆さま、そしてスクワイヤーズ博士、宮本英昭准教授、本当にありがとうございました!